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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)2325号 判決

原告

磯川信夫

ほか一名

被告

株式会社サン歯科技研

ほか二名

第二 主文

一、被告らは連帯して

原告磯川信夫に対し金一八万四五〇三円及びこれに対する昭和四五年三月二一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告磯川信夫のその余の請求及び原告磯川きく江の請求をいずれも棄却する。

三、訴訟費用は原告らと被告らとの各自の負担とする。

四、右第一項に限り仮に執行することができる。

第三 事実

一、請求の趣旨

(一)  被告らは連帯して

原告磯川信夫に対し金四五万三九二〇円、

原告磯川きく江に対し金五二万一〇〇〇円

及びこれらに対する昭和四四年四月八日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告らの負担とする。

(三)  仮執行の宣言を求める。

二、請求の原因

(一)  (事故の発生)

原告らは次の交通事故により負傷した。

1  発生時 昭和四四年四月七日午後八時二〇分頃

2  発生地 東京都板橋区双葉町一八番地先交差点(交通整理なし)

3  被告車 小型乗用自動車(三菱コルト一〇〇〇。練馬五む七七四七)

運転手 被告松永

4  原告車 軽四輪貨物自動車(三菱ミニカ。六足立す六二三三)

運転手 原告信夫

被害者 原告両名(但し原告きく江は助手席に同乗していた)

5  態様 出合頭に、被告車の前部が原告車の左側面に衝突。

6  負傷の部位程度

原告信夫は胸部挫傷、右肩部挫傷、右前腕挫創により昭和四四年四月七日以降同年一二月一五日までの約九カ月にわたる通院治療を余儀なくされた。原告きく江は胸背部挫傷、左肩上腕挫傷、左第三肋骨々折により昭和四四年七月四日以降四六日間の入院加療とこれに引続き同年一二月一九日までの通院治療を余儀なくされた。

原告らの右入通院先は、いずれも常盤台外科病院である。

(二)  (責任原因)

被告らは、それぞれ次の理由により本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

(1)  被告会社は被告車を業務用に使用し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法第三条たよる責任。

(2)  被告岩淵は被告会社の代表取締役として被告会社に代わり現実に被告会社の業務執行を監督する立場にあつた者であるから、民法第七一五条第二項による責任。

(3)  被告松永は本件事故発生につき、次のような過失があつたから、不法行為者本人として民法第七〇九条による責任。即ち本件事故発生地は約八米の幅員の道路が十字形に交差したところであるが、被告車の進路は、ゆるい登坂で、かつ、交差点の手前には一時停止及び一方通行出口の各道路標識が設置されているから、交差点に入る前で一時停止して左右の道路状況から安全に通過できることを確認したうえで進入すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、時速約四〇ないし五〇粁で進入した過失があつた。これがため時速二〇粁位に減速徐行しながら通過していた原告車の左側ドア付近に被告車の前部が衝突した。

(三)  (損害)

(原告信夫分)

(1) 休業補償相当損害 金一〇万九一五〇円

原告信夫は入院こそしなかつたが、自宅に安静加療するかたわら、通院治療していた。原告らの個人経営して来た米穀販売店の業務を遂行することが不可能となつた。そこで昭和四四年四月八日以降同年五月二五日までの間、久喜要外四名の同業者仲間に、かわるがわる頼んで、米穀販売業務を継続せざるを得なかつた。その結果、同人らに支払つた日当相当手当合計金七万五〇〇〇円、更に同人らのために支出した飲食費合計金三万四一五〇円の損害を受けた。

(2) 家政婦賃金相当損害 金一万円

原告きく江(妻)が前記のとおり入院したため、日常家事を行うことができず、原告信夫は同年四月二三日以降同年五月二日までの一〇日間、訴外酒井文子を家政婦として雇入れ、同人に賃金として金一万円を支払つた。

(3) 特別損害 金七万九七七〇円

原告らの実子磯川恭庸は同年四月から学校法人村田簿記学校へ通学することになつていた。同人のために、二カ年制本科昼間部入学諸費用として金七万六五一〇円を原告信夫は同年二月一四日納入し、更に同年四月二一日通学定期(ときわ台駅から水道橋駅までの三カ月分)を金三二六〇円で購入した。しかし、本件事故により右訴外人が家業たる米穀商を継続するためには、右学校を退学をせざるを得なかつた。原告らの家庭は原告ら夫婦と右訴外人との三名しか居らないためである。結局右出費は無駄となり損失に終つた。

(4) 通院交通費及び諸雑費 金三万円

(5) 慰藉料 金三〇万円

原告信夫は本件事故直後に診察を受けた医師から、入院するよう強く勧められたけれども、原告きく江が入院してしまい、一八才の息子一人を残して入院することに非常な不安を抱いた結果、入院をあきらめ、通院治療にした。そして前記のとおり約九カ月の通院を要した諸事情から金三〇万円の慰藉料を相当とする。

(6) 弁護士費用 金一〇万円

(原告きく江分)

(1) 休養損害 金五万六〇〇〇円

原告きく江は夫信夫の経営する米穀商に従事し、昭和四三年度に合計金三三万六〇〇〇円の収入を得た。ところで本件事故により昭和四四年四月八日以降同年六月一〇日までの間、右業務に従事することができなかつたため、右二カ月間(平均月収二万八〇〇〇円)の収入を失つた。

(2) 入通院交通費及び諸雑費 金四万円

(3) 慰藉料 金五〇万円

原告きく江の本件事故による精神的苦痛を慰藉すべき額は、前記の諸事情からして右金額を相当とする。

(4) 弁護士費用 金一〇万円

(損害の填補) 合計金三五万円

以上の原告らの損害に対し被告側より金三五万円の内入弁済があつた。原告らは、その半額宛を前記損害に充当した。

(四)  (結論)

原告らの右損害から右填補額を差引くと原告信夫は金四五万三九二〇円、原告きく江は金五二万一〇〇〇円となる。従つてこれらの元本とこれらに対する本件事故の翌日たる昭和四四年四月八日以降各完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を本訴請求する。

なお弁済の抗弁は認める(但し充当を除く)。

三、被告らの答弁

被告らは「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を定め、請求原因に対し次のとおり述べた。

(一)  請求原因第(一)項中1 2 3 4 5はいずれも認めるけれども、6は争う。

原告らが、その主張するとおりの病名で、主張する病院に入通院したけれども、その治療期間は異る。即ち原告信夫は昭和四四年四月七日以降同年七月四日まで(内実日数は三八日)通院して治癒した。原告きく江は当初四六日間入院し、退院後同年九月二日まで(内実日数三四日)通院して治癒した。

(二)  同第(二)項は次のとおりである。

(1)  被告会社が被告車の運行供用車であることは認めるけれども、その余は争う。

(2)  被告岩淵が被告会社の代表取締役であることは認めるけれども、その余は争う。

(3)  被告車の進路に一時停止の標識があつたことは認めるけれども、その余は争う。

(三)  同第(三)項は不知。

但し原告信夫分の内(3)の特別損害は本件事故と相当因果関係がない。

原告主張の金三五万円の一部弁済があつた点は認める。

(四)  同第(四)項は争う。

四、被告らの抗弁

(一)  過失相殺

原告信夫は左右の見とおしの悪い本件事故発生地たる交差点において徐行すべきなのに、これを怠り、時速五〇粁位のまま進入したため、被告車の進路を妨げる状態で進行した過失がある。原告信夫は飲酒運転してはならないのに、飲酒運転しており、原告きく江も右飲酒運転を知りながら同乗した。

他方、被告車は一時停止の標識に従い減速すべくブレーきをかけ時速二〇粁位になつたとき突然右方道路から右の如く走行して来たので本件事故が発生した。

なお原告車の修理費金九万五一五〇円につき、被告側が六割五分ないし六割に相当する金六万円を負担する旨の示談が成立している。

従つて本訴(人損)についても原告車が四割、被告車が六割の比率において過失相殺さるべきである。

(二)  弁済 合計金六五万五八〇〇円

被告側は次のとおり弁済した。この部分は本訴請求から除外されているけれども、この既払金額も含めて原告らの総損害を算出して右の割合において相殺さるべきである。

(原告信夫分)

治療費 金三万四九八五円

慰藉料 金一〇万円

(原告きく江分)

治療費 金二二万九八〇〇円

看護料 金三万八二一五円

看護人夜具賃料 金二八〇〇円

慰藉料 金二五万円

第四 理由

一、(本件事故の発生)

請求原因第(一)項中1 2 3 4 5の事実は当事者間に争いがない。6(負傷の部位程度)については、原告らが、その主張のとおりの病名で、その主張する病院に入通院したことは当事者間に争いがない。〔証拠略〕によれば、原告らの入通院は次のとおりで、その最終日をもつて治癒と診断されていることが認められる。

原告信夫は昭和四四年四月七日以降同年七月四日まで(内実日数三八日)通院した。

原告きみ江は同年四月七日以降同年五月二二日まで(四六日)入院、その翌日以降同年九月二日まで(内実日数三四日)通院した。

二、(責任原因)

なお過夫相殺の抗弁についても併せて判断する。

(1)  被告会社が被告車の運行供用者であることは当事者間に争いがないから、自賠法第三条により賠償責任がある。

(2)  被告岩淵が被告会社の代表取締役であることは当事者間に争いがない。〔証拠略〕によれば、被告会社は創立して間もなく、被告岩淵の釆配によつて入歯、金冠等を製造する従業員六名位、作業所一五~二〇坪位、自動車二台(内一台は被告岩淵専用)を有していた被告岩淵の個人的会社であり、被告岩淵の指示で被告会社の得意先へ行つた帰途、本件事故が発生していることが認められる。

右認定事実によれば、被告岩淵は民法第七一五条第二項による賠償責任がある。

(3)  被告松永は被告車を運転して本件事故発生地点に時速三五粁位で直進して来たところ、進路前方に一時停止の標識が設置されており、かつ、左右の見とおしが困難であつたから、交差点の手前で一旦停止して左右に通ずる道路の安全を確認してから進行すべきなのにもかかわらず、交差点に入る直前で右一時停止の標識に気づき急拠停止の措置をとろうとしたが間にあわず、そのまま交差点内に被告車を進入せしめた過失がある。これらの事実は〔証拠略〕までによつて認められる。

従つて右認定事実によれば被告松永は民法七〇九条により賠償する責任がある。

(4)  過失相殺につき検討する。

右各証拠によれば、原告車の進路からみても、左右の見とおしの困難な交差点であつたことから徐行すべきにもかかわらず、これを怠り原告車は時速二〇ないし三〇粁位で直進し、別紙見取図の如く衝突したことが認められる。これによれば、過失割合は原告車が三、被告車が七と解するのを相当とする。従つて原告らの損害の内七割相当分を被告らは連帯して支払うべき義務がある。

三、(損害)

(一)  原告信夫分 合計金四一万三五五五円

1  休業損害相当分 金八万五〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、原告方は米穀小売販売店を経営していたところ、本件事故に遭遇し、原告信夫が負傷して右の商売が出来なかつたため、事故の翌日から同年五月二五日までの間、同業者に交替して手伝つて貰い、小売をなんとか継続していたため、同人らに対する日当相当分合計金七万五〇〇〇円の出費を余儀なくされたことが認められ、更に同人らに対する食事費として控目にみて合計金一万円を要したものと推認できる。

2  家政婦賃相当分 金一万円

原告きく江(原告信夫の妻)が前認定のとおり入院してしまつたので、同年四月二三日から一〇日間にわたり訴外酒井文子を家政婦として雇入れ、同人に金一万円の賃金を支払つた。このことは〔証拠略〕によつて認め得る。

3  特別損害 金七万九七七〇円

〔証拠略〕によれば、請求原因第(三)項中、原告信夫分(3)の事実を認め得る。そして本件事故と相当因果関係があるものと認める。

4  通院交通費 金三八〇〇円

前認定のとおり通院実日数三八日であつたこと、その負傷の程度弁論の全趣旨からみて、通院等に要した雑費を一日金一〇〇円宛、合計金三八〇〇円と推認するのを相当とする。

5  治療費 金三万四九八五円

この点は当事者間に争がなく、本訴請求外であるけれども、過失相殺する前提として総損害を算出するために認定した。

6  慰藉料 金二〇万円

前認定のとおりの負傷、妻にも入院され、息子の通学を断念せざるを得なかつたこと、米穀の小売商として休業すると、その不都合甚大なため、同業者の好意を得て、やつと営業を続けていた等の諸事情を斟酌して金二〇万円をもつて相当と認める。

(二)  原告きく江分 合計金七四万四〇一五円

1  休業損害 金五万六〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、原告きく江は家業たる米穀商を手伝い、かつ、主婦として稼働していたこと、一日金一、〇〇〇円位の得べかりし利益を喪失したものと認めるのを相当とする。入院中の四六日分は金四万六〇〇〇円となる。更に通院はその半額(五〇〇円)宛を認めることとし、実日数三四日であることは前認定のとおりであるから、金一万七〇〇〇円となる。右合計の範囲で原告きく江の主張する金五万六〇〇〇円を、そのまま休業損害として認める。

2  入通院の交通費、雑費 金一万七二〇〇円

入院一日につき金三〇〇円宛、通院一日につき金一〇〇円宛の諸雑費を必要としたことが、前認定の負傷の程度から推認できる。入院四六日分が金一万三八〇〇円、通院実日数三四日で金三四〇〇円の合計として右のとおり認める。

3  治療費 金二七万〇八一五円

この点は当事者間に争いがないけれども、過失相殺する前提としての総損害を算出する意味で認定した。

4  慰藉料 金四〇万円

本件事故による精神的苦痛を慰藉すべき額は、前認定の諸事情からして右金額を相当と認める。

(三)  過失相殺と弁済充当

前認定のとおり過失割合は三対七であるから、原告らの各損害の七割に弁済充当すると次のとおりとなる。

<省略>

なお弁済額については、当事者間に争いがなく、各振分け充当については弁論の全趣旨から、被告側主張のとおりを相当と認めた。

(四)  弁護士費用 金三万円

原告きく江に対しては既に弁済額にて賄われているから(但し金一〇円オーバーしているけれども大勢に影響ないので、そのままとした)、弁護士費用は認めない。原告信夫については、被告側が任意弁済しないため原告訴訟代理人に本訴の提起と追行とを委任したことが、弁論の全趣旨により認められる。その弁護士費用の内被告側に負担せしめる分として金三万円を相当と認める。

四、(結論)

被告らは連帯して原告信夫に対して合計金一八万四五〇三円及びこれに対する訴状送達の翌日たる昭和四五年三月二一日(この点は当裁判所に顕著)以降右完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。この限度で認容し、その余を棄却し、原告きく江の請求を全部棄却することとし、民事訴訟法第九〇条第九二条、第九三条第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 龍前三郎)

見取図

<省略>

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